2007年10月04日
 ■  モンゴルプロジェクト2007~連載第五回~

「空、草原、ヤクの乳」  ー第五回ー


担当;勝田(業務;プログラム担当サブリーダー)

5日目
ゲルステイ

 空が青いって知ってる?知ってるよね。誰だって空くらい見上げたことあるから。でも、本当に青い空って滅多に見たことないと思うんだ。正直なところ。
 

 その日気がついたら僕は草原にいた。正しくは山の斜面の草の上に寝転がってたんだ。ただ、とにかく寒くて目が覚めたのを覚えているよ。半そでだったしね。最初に目に飛び込んできたのは本当に青い空だった。きっとほとんどの人が見たことのないだろう空。実際、あの空を見たらだれしもが感動して自慢するんじゃないかな。ホンモノの空をみたって。

 でも、僕は違った。感動なんてできなかったんだよ。実際のところ。とにかく、妙に気分が悪いんだ。頭も痛い。大体、どうして自分が山の斜面で目を覚ましたのかさえ分からなかった。前日はみんなと一緒にゲルの中にいたからね。そのゲルを遠くに見下ろせる山の斜面に自分がいたことは理解ができなかったし、あんまり考えることもできなかった。本当に頭が痛くて、気持ちわるかったんだ。まったくの話。


 しばらくすると、クルーが僕を見つけて、おはようの挨拶をして、どうしてこんなところで寝てるのか、と声をかけた。でも、答えることはできなかった。自分でもどうしてこんな寒い所で寝ているかわからなかったからね。そしてゲルの中が大変なことになっていることを教えてくれた。その時ようやく僕のTシャツからおかしな香りがすることと、頭が痛くて気持ちが悪いことが理解できた。本当にわかったんだ。


 それからはとにかく大変だった。10歩あるく毎に座りたくなるんだ。頭が体の一番上にくっついてることが嫌になるんだよ。その頭を地面につけて体中を地面と平行にしておきたくなってしまうんだ。だからまず、ゲルに帰るまでに100万秒くらいの時間を費やしてしまった。本当にみんなに迷惑をかけたよ。何しろ黙ってゲルを出た上になかなか戻ってこなかったんだからね。

 そして、全く食べることができなかった。胃の中は空のはずなんだけどね。朝ごはんもクルーがお世話になった家族にふるまったお汁粉も食べようとすら思わなかった。ただひたすら草原の上に体を張り付けて、空を眺めてた。たまに牛にかこまれて食べられそうになりながら。あれは本当に怖かったね。正直なところ。


 歩いては座りそして横になる。こんなことを2万回くらい繰り返しながらそこで半日を過ごし、僕に残っていた99%の力を振り絞って、お世話になった家族とクルーや通訳さん、運転手と写真を撮って僕たちはもといたアパートに戻っていった。途中で飲んだオレンジジュースがその日初めて僕が胃の中に入れたものだったんだけど、これが本当に美味しかった。生き返ったような気持になったよ。教えてくれたクルーに感謝だね。嘘じゃなくて。


 僕の話はこれでおしまい。もし話そうと思えば、変な香りのしたTシャツの行方や牛に囲まれた時の話、チビすけとの紙風船サッカーとか、そういう話も出来る。でも、あんまり気が乗らないんだ。ほんとの話。なんせひたすら迷惑をかけっぱなしだったからね。ちなみに言っておくと、実は僕だけじゃなかったんだ。そいつはモンゴル3回目だったんだけどやられちゃったんだよね。2人でモンゴルの大地に寝そべって迷惑をかけてた訳。今ではいい思い出だけど、本当にご迷惑をおかけしました。


By Hiromitsu Katsuta


5-1.jpg
(泊まったゲル)

5-3.jpg
(ゲルの子供。草原の子供。)

5-2.jpg
(上を向かなくても、空は見える。星も見える。)

投稿者 waseda-rovers : 2007年10月04日 01:47

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